「Webサイトの表示速度が遅い…」 「モバイルユーザーの直帰率を改善したい…」
Webサイトのパフォーマンスに課題を感じるマーケターや経営者の方であれば、一度は「AMP(Accelerated Mobile Pages)」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。一時期は「モバイルサイト高速化の切り札」として、多くのメディアサイトで導入が進みました。
しかし、Googleの検索アルゴリズムが変化し続ける今、「AMPって、まだ効果あるの?」「対応すべきか迷っている」と感じている方も少なくないはずです。
本記事では、そんな疑問にお答えすべく、2025年現在のAMPの立ち位置、SEOへの真の効果、そして今本当に注力すべきWebサイトのパフォーマンス改善策について、最新情報を踏まえながら徹底的に解説します。単なるAMPの解説に留まらず、貴社のWebマーケティング戦略を次のレベルへ引き上げるための具体的なヒントを提供します。
そもそもAMP(Accelerated Mobile Pages)とは?
まずは基本に立ち返り、AMPがどのような技術なのかを簡潔におさらいしましょう。
AMPとは、Googleが提唱した、モバイル端末でのWebページ表示を高速化するためのオープンソースのフレームワークです。不要な要素を削ぎ落としたAMP HTMLという特殊なHTMLでページを構築し、Googleのサーバーにキャッシュ(一時保存)させることで、ユーザーがリンクをクリックした瞬間にページが瞬時に表示されるような体験を実現します。
AMPが実現する高速化の仕組み
AMPの高速表示は、主に以下の3つの要素によって支えられています。
- AMP HTML: 機能が制限されたHTMLで、ページの軽量化を図ります。
- AMP JS: 非同期読み込みを強制し、レンダリングを妨げないJavaScriptライブラリです。
- Google AMP Cache: 事前にページコンテンツをGoogleのサーバーにキャッシュし、高速に配信します。
この仕組みにより、ユーザーはストレスなくコンテンツを閲覧できるのです。
かつて絶大だったAMP対応のメリット
一時期、多くの企業がこぞってAMP対応を進めたのには、明確なメリットがあったからです。ここでは、AMPがもたらす主な利点を振り返ってみましょう。
圧倒的な表示速度の向上
AMPの最大のメリットは、その名の通り「ページの高速化」です。通常のモバイルページと比較して、表示速度が劇的に向上するため、ユーザーの離脱率を大幅に低減させる効果が期待できました。
検索結果での優遇措置(※過去の話)
かつてGoogleは、検索結果でAMP対応ページを優遇していました。ニュース記事などが表示される「トップストーリー」枠ではAMP対応が必須条件とされ、検索結果一覧でもAMPページには「⚡(雷)」マークが表示され、ユーザーに高速なページであることをアピールできていました。これが、SEO対策としてAMP対応が注目された大きな理由です。
無視できないAMP対応のデメリットと注意点
一方で、AMP対応には無視できないデメリットや導入の際に考慮すべき点も存在します。
デザインや機能の制約が大きい
AMP HTMLは仕様が厳格に定められているため、通常のWebサイトで実現できるような複雑なデザインや動的な機能を実装することが困難です。自社のブランディングを表現するデザインや、特別なUI/UXを求めるサイトには不向きな場合があります。
実装と運用のコスト・手間がかかる
AMPを導入するには、既存のページとは別にAMP仕様のページを新たに作成・管理する必要があります。これには専門的な知識が求められるため、開発コストや運用工数が増加します。特に、リソースが限られている企業にとっては、大きな負担となり得ます。
正確な効果測定が難しい場合がある
AMPページはGoogleのドメイン(google.com/amp/...
)上で表示されることがあるため、Google Analyticsなどのツールでアクセス解析を行う際に、正確なユーザー行動を追跡するための追加設定が必要になるなど、データ計測が複雑化する側面がありました。
【本題】2025年現在、AMP対応は本当にSEOへ効果があるのか?
さて、ここからが本記事の核心です。過去のメリット・デメリットを踏まえた上で、現在のAMPはSEOに対してどのような影響を持つのでしょうか。
結論から申し上げると、かつてのような「AMP対応=SEOで有利」という直接的な優位性は、ほぼ失われています。
GoogleによるAMP優遇措置の廃止
この変化の最も大きな要因は、Googleの方針転換です。Googleは2021年6月に「ページエクスペリエンスアップデート」を完了し、検索結果のランキング優遇やトップストーリー枠への掲載条件からAMPを撤廃しました。
Google Search Central Blogでの言及
“この変更に伴い、ページ エクスペリエンスのランキング シグナルも更新されます。また、トップニュース カルーセル機能の掲載対象が、AMP を使用しているコンテンツに限定されなくなります。”
現在、検索結果で「⚡」マークを見かけることがなくなったのは、このためです。つまり、コストをかけてAMPに対応しても、それ自体が直接的な検索順位の上昇に繋がることはなくなったのです。
ではAMPは完全に「オワコン」なのか?
「それなら、AMPはもう不要な技術なのか?」と問われれば、答えは「必ずしもそうではない」となります。
AMPの本質的な価値は「ユーザー体験の向上」にあります。そして、Googleが現在最も重要視している指標の一つが、まさにこのユーザー体験です。AMPは、そのユーザー体験を構成する重要な要素である「表示速度」を改善するための有効な選択肢の一つであり続けています。
間接的ではありますが、表示速度が速いページはユーザーの満足度を高め、直帰率の低下や滞在時間の増加に繋がります。これらのユーザーエンゲージメント指標は、依然としてSEOにおいて重要な要素です。
つまり、AMPは「魔法の杖」ではなくなりましたが、「強力な武器の一つ」としての価値は残っている、と理解するのが適切でしょう。
AMPの次なる主役「Core Web Vitals」の重要性
AMPの優遇措置廃止と同時に、Googleが新たなランキング指標として導入したのが**「Core Web Vitals(コアウェブバイタル)」**です。これからのWebサイトパフォーマンス改善を語る上で、避けては通れない最重要指標と言えます。
Core Web Vitalsは、ユーザーがページ上でどのような体験をするかを測定するための具体的な指標群であり、以下の3つで構成されています。
- LCP (Largest Contentful Paint): 読み込み速度。ページの主要なコンテンツが表示されるまでの時間。2.5秒未満が理想です。
- FID (First Input Delay): インタラクティブ性。ユーザーが最初に操作(クリックなど)してからブラウザが応答するまでの時間。100ミリ秒未満が理想です。
- CLS (Cumulative Layout Shift): 視覚的な安定性。ページの読み込み中にレイアウトがどれだけズレるかを示す指標。0.1未満が理想です。
Googleは、これらの指標が良好なページを高く評価します。重要なのは、これらの指標はAMPでなくても改善できるという点です。画像の最適化、CSSやJavaScriptの配信方法の見直し、サーバーの応答速度改善など、適切な施策を行えば、Core Web Vitalsのスコアは向上します。
AMP対応は、あくまでCore Web Vitalsを改善するための「手段の一つ」であり、目的ではありません。
【最終結論】自社サイトはAMP対応すべきか?判断基準を解説
これまでの情報を総合すると、2025年現在のAMP対応に関する判断基準は、以下のように整理できます。
AMP対応を検討する価値があるケース
- 大手ニュースメディアや大規模ブログサイト: 日々大量の記事コンテンツを配信し、検索流入からの瞬間的なアクセスが非常に多いサイトの場合、AMPによる高速化とサーバー負荷軽減の恩恵は依然として大きい可能性があります。
- 開発リソースに余裕がある: 通常ページとAMPページを並行して運用・改善していくためのエンジニアやディレクターのリソースが十分に確保できる場合。
- Core Web Vitalsのスコア改善が他の手段では難しい: 既存システムの制約などにより、根本的なサイト改修が困難な場合に、次善の策としてAMP導入を検討する価値はあります。
AMP対応を推奨しないケース
- ECサイト、SaaSのサービスサイト、コーポレートサイトなど: デザインの自由度やインタラクティブな機能がビジネス上重要なサイトの場合、AMPの制約が大きなデメリットになります。コンバージョンへの影響を慎重に考える必要があります。
- 開発リソースが限られている: 無理にAMP対応を進めるよりも、そのリソースをCore Web Vitalsの改善や、より質の高いコンテンツ作成に投資する方が、費用対効果が高いと言えます。
- すでにCore Web Vitalsのスコアが良好: 現状でユーザー体験が良好であると判断できる場合、あえてコストをかけてAMPを導入する必要性は低いでしょう。
多くの企業にとっては、AMP対応に固執するよりも、Core Web Vitalsの改善にリソースを集中投下する方が賢明な判断と言えるでしょう。
AMPの実装・確認・そして「やめる」という選択
最後に、実務的な側面として、AMPの導入方法、確認方法、そして不要と判断した場合の解除方法について簡潔に触れておきます。
AMPの導入方法
- WordPressの場合: 「AMP for WP」や「AMP」といった公式・サードパーティ製のプラグインを利用することで、比較的容易に導入が可能です。ただし、デザインのカスタマイズや詳細設定には専門知識が必要です。
- 手動で実装する場合: AMPの公式サイトのドキュメントに従い、AMP HTMLの仕様に沿ってページをコーディングします。
AMP対応の確認方法
- The AMP Validator: AMP公式のバリデーションツールです。URLを入力することで、AMPの構文が正しいかチェックできます。
- Google Search Console: 「拡張」メニュー内の「AMP」レポートで、自身のサイトのAMPページがGoogleにどのように認識されているか、エラーがないかを確認できます。
AMP対応の解除(廃止)方法
AMPが不要と判断した場合、適切な手順で解除しないとSEOに悪影響を及ぼす可能性があります。
- まず、AMPページの生成を停止します。
- 次に、非AMPページ(通常ページ)へリダイレクト設定を行います。
rel="canonical"
で指定している正規ページへ、301リダイレクトを設定するのが一般的です。 - この設定により、検索エンジンはAMPページの評価を正規ページへと引き継ぎ、インデックスからAMPページを徐々に削除していきます。
まとめ:ユーザーファーストの追求こそが、本質的なSEO対策
AMPは、モバイルWebの黎明期において、表示速度の重要性を業界全体に知らしめた画期的な技術でした。しかし、その役割はGoogleのページエクスペリエンスアップデートを経て、大きく変化しました。
2025年現在、私たちが本当に向き合うべきは、「AMP対応」という手段そのものではなく、**「Core Web Vitalsに代表される、優れたユーザー体験をいかにして実現するか」**という本質的な問いです。
ページの表示が速いこと、操作がスムーズであること、コンテンツが快適に読めること。こうしたユーザーにとっての「当たり前」を追求し続けることこそが、結果としてGoogleからの評価を高め、持続的なトラフィックとビジネスの成長に繋がるのです。
自社のサイトにとって最適なパフォーマンス改善策は何か。AMPという選択肢も含め、今一度、ユーザー視点で戦略を見直してみてはいかがでしょうか。
Webサイトの表示速度改善やCore Web Vitals対策は、専門的な知識と戦略的なアプローチが不可欠です。どこから手をつければ良いか分からない、あるいは専門家の知見を取り入れて最短で成果を出したいとお考えでしたら、ぜひ一度、私たち株式会社MIPにご相談ください。貴社のビジネスに貢献する最適なソリューションをご提案します。