「いつまでも競合との価格競争から抜け出せない…」 「新しい事業を始めたいが、すでに市場は飽和している…」
もしあなたがそんな悩みを抱えているなら、「ブルーオーシャン戦略」が突破口になるかもしれません。
ブルーオーシャン戦略とは、激しい競争が繰り広げられる既存市場(レッドオーシャン)から抜け出し、全く新しい市場を創造して競争のない状態(ブルーオーシャン)を築くための経営戦略です。
この記事では、ブルーオーシャン戦略の基本概念から、成功に導くための具体的なフレームワーク、そして国内外の成功事例まで、実践的な内容を徹底的に解説します。競合との消耗戦に終止符を打ち、あなたのビジネスを次のステージへと引き上げるためのヒントを見つけてください。
1. ブルーオーシャン戦略とは?「血みどろの海」から「未開の海」へ
まず、ブルーオーシャン戦略の前提となる「レッドオーシャン」と「ブルーオーシャン」という2つの概念を理解しましょう。
レッドオーシャン:激しい競争が繰り広げられる既存市場
**レッドオーシャン(Red Ocean)**とは、すでに多くの企業が参入し、激しい競争が繰り広げられている既存の市場を指します。 価格競争や機能競争が激化し、あたかも血みどろの戦いで海が赤く染まっているように見えることから、この名が付けられました。
レッドオーシャンでは、限られた市場のパイを奪い合うため、収益性が低下しやすく、長期的な成長が困難になる傾向があります。
ブルーオーシャン:競争のない未開拓の市場
一方、**ブルーオーシャン(Blue Ocean)**とは、まだ誰も足を踏み入れていない未開拓の市場を指します。 競争相手が存在しないため、血みどろの戦いがなく、青く穏やかな海のように見えることから、この名が付けられました。
ブルーオーシャン戦略は、この未開拓の市場を自ら創造することで、価格競争から解放され、高い収益性を確保することを目的とします。
提唱者と書籍
この画期的な戦略を提唱したのは、INSEAD(欧州経営大学院)のW・チャン・キム氏とレネ・モボルニュ氏です。彼らが2005年に出版した著書『ブルー・オーシャン戦略』は、世界中のビジネスパーソンに大きな影響を与えました。
2. ブルーオーシャン戦略の3つのメリットとリスク
ブルーオーシャン戦略を成功させるには、そのメリットだけでなく、潜在的なリスクも理解しておく必要があります。
メリット:なぜブルーオーシャンを狙うべきなのか?
1. 競争を回避し、収益性を高められる
最大のメリットは、競合がいない市場でビジネスを展開できることです。価格競争に巻き込まれることがないため、自社で自由に価格を決定でき、高い利益率を確保できます。
2. 強固なブランドを確立できる
市場の「先行者」として、自社の商品やサービスがその市場の代名詞となり、強力なブランドを確立できます。これにより、後から競合が参入しても、顧客の第一想起(真っ先に思い浮かぶブランド)となり、優位性を保ちやすくなります。
3. 顧客の創造と市場の拡大
ブルーオーシャン戦略は、既存の顧客を奪い合うのではなく、**これまで業界の顧客ではなかった「非顧客」**をターゲットにすることで、新たな需要を創造し、市場そのものを拡大させることを目指します。
リスク:注意すべき落とし穴
1. 成功しても模倣される可能性がある
ブルーオーシャン戦略で成功を収めると、必ずと言っていいほど、後から競合他社が模倣して参入してきます。模倣を困難にするための独自の強み(技術力、ブランド力、オペレーションなど)を構築することが重要です。
2. 新市場開拓の不確実性
既存市場とは異なり、新しい市場はまだ顧客のニーズが顕在化していない場合があります。市場が本当に存在するのか、需要を創造できるのか、といった不確実性が高いのが難点です。
3. 大規模な初期投資や時間が必要な場合がある
新しい市場を創造するためには、研究開発やマーケティングに多大なコストと時間がかかる場合があります。十分なリソースと長期的な視点が必要です。
3. 成功事例から学ぶ!ブルーオーシャン戦略を成功させた企業
ここでは、ブルーオーシャン戦略を実践し、成功を収めた国内外の具体的な事例を紹介します。
事例1:任天堂 – Wii
従来のゲーム業界:高性能なグラフィックと複雑な操作
2000年代、ソニーのプレイステーションやマイクロソフトのXboxは、よりリアルなグラフィックと高性能なゲーム機を競い合っていました。これはまさにレッドオーシャンです。
ブルーオーシャンの発見:ゲームをしない「非顧客」の創造
任天堂は、このレッドオーシャンから脱却するため、ターゲットを「ゲーム愛好家」から「普段ゲームをしない層」へと広げました。
- 取り除いたもの: 高性能なグラフィック、複雑なコントローラー
- 付け加えたもの: 直感的な操作(モーションセンサー)、家族や友人と楽しめるコミュニケーションツールとしての価値
結果として、Wiiはゲームに馴染みのない高齢者や女性層にも受け入れられ、世界中で大ヒットを記録。競争軸を「スペック」から「楽しさ・体験」へとシフトさせることに成功しました。
事例2:QBハウス – 10分1000円カット
従来の理容業界:パーマやシャンプーを含むフルサービス
従来の理容室や美容室は、カット以外にもシャンプー、顔そり、パーマ、カラーリングといった多様なサービスを提供していました。
ブルーオーシャンの発見:「カットだけ」に特化した新市場
QBハウスは、顧客が本当に求めているのは何かを徹底的に分析しました。
- 取り除いたもの: シャンプー、顔そり、パーマ、予約制、待合室の雑誌
- 減らしたこと: 滞在時間、料金
- 増やしたこと: 迅速さ、利便性
これにより、**「カットだけを短時間で安く済ませたい」**という新たなニーズを持つ顧客層を開拓しました。一般的な理容室が1時間かけて行うサービスを、10分1000円という新しい価値で提供し、圧倒的な市場優位性を築きました。
事例3:ユニクロ – 高機能な日常着
従来のファッション業界:トレンドとブランドによる競争
アパレル業界はトレンドの移り変わりが早く、常に新しいデザインやブランド価値を競い合うレッドオーシャンでした。
ブルーオーシャンの発見:機能性と低価格を両立
ユニクロは、ファッション性を重視する従来の業界と一線を画し、**「高機能で低価格な日常着」**という新しい市場を創造しました。
- 取り除いたもの: 流行に左右されるデザイン、頻繁なモデルチェンジ
- 増やしたこと: ヒートテック、エアリズムに代表される機能性、製造小売業(SPA)による低コスト化
これにより、アパレルの新たな競争軸として「機能性」を確立し、幅広い層から支持されるグローバルブランドへと成長しました。
4. ブルーオーシャン戦略のフレームワーク:実践的な進め方
ブルーオーシャンを闇雲に探すのではなく、体系的なフレームワークを用いて分析・実行することが成功への鍵となります。
フレームワーク1:戦略キャンバス
戦略キャンバスは、自社と競合の競争要因を可視化するためのツールです。横軸に「競争要因(顧客が重視する要素)」、縦軸に「各要因への投資レベル」を設定してグラフを作成します。
【手順】
- 競合の戦略を分析: 競合他社がどの要因に力を入れているかをグラフ化します。
- 自社の現状を分析: 同様に、自社がどの要因に力を入れているかをグラフ化します。
- ブルーオーシャンを発見: グラフを比較することで、競合が力を入れていない、あるいは見過ごしている「空白地帯」を発見します。これがブルーオーシャンを見つけるヒントになります。
フレームワーク2:4つのアクション
戦略キャンバスで見つけたヒントをもとに、具体的な行動を策定するためのフレームワークが**「4つのアクション(ERCR)」**です。
- 取り除く(Eliminate): 業界の常識とされているが、顧客にとって不要な要素は何か?
- 減らす(Reduce): 業界平均よりも大胆に削減すべき要素は何か?
- 増やす(Raise): 業界平均よりも大胆に増やすべき要素は何か?
- 創造する(Create): 業界でこれまで提供されておらず、新しい価値を創造できる要素は何か?
この4つの問いに答えることで、自社がどのような価値を提供すべきか、そしてそのために何をするべきかが明確になります。
5. まとめ:競争から脱却し、あなたのビジネスを飛躍させる
ブルーオーシャン戦略は、単なる市場開拓の手法ではありません。それは、既存の常識を疑い、顧客が本当に求めている「新しい価値」を創造するための思考法です。
今、あなたがレッドオーシャンで苦戦しているのであれば、一度立ち止まって、この戦略を自社のビジネスに当てはめてみてください。
「そもそも、この業界の常識は本当に必要なのだろうか?」 「私たちの商品やサービスを使わない人は、なぜ使わないのだろう?」
そう問いかけることで、まだ誰も気づいていない「青い海」が見えてくるはずです。
株式会社MIPでは、貴社の事業に最適なマーケティング戦略の立案から実行までをサポートしています。ブルーオーシャン戦略の実践について、専門家の視点からアドバイスが必要でしたら、ぜひ一度ご相談ください。